インビザライン治療の注意点
インビザライン治療は子どもから大人まで受けられる歯科矯正です。インビザライン治療ではマウスピースを使用します。マウスピースの装着時間を守らなかったり、セルフケアを怠ったりすると、治療に影響する恐れがあるためご注意ください。
本コラムでは、インビザラインの使用方法や注意点について解説いたします。
年齢や症例に制限はある?
インビザライン治療は、透明なマウスピースにより歯並びを整える矯正方法で、目立たず痛みが少ないのも特徴です。近年では子どもにも取り組みやすい治療となりました。
「歯の矯正は子どもがするもの」とイメージされるかもしれません。しかし、インビザライン治療は子どもから大人まで、幅広い年齢層の方が受けられます。
インビザライン治療は6歳頃から可能
インビザライン治療で使用するマウスピースは、子ども用と大人用に分かれています。
小児矯正で使用する「インビザライン・ファースト」は、乳歯と永久歯が混在する6〜12歳頃まで治療が可能です。将来的に抜歯をせず矯正を行うためにも、永久歯が生え揃う前に治療を始めることがおすすめです。永久歯が生え揃った後は、大人と同様のマウスピースを用います。また、インビザライン治療は、口腔内が健康かつ軽度な不正咬合(悪い歯並びや噛み合わせ)であればいつでも開始できます。
インビザライン治療に適さない症例
インビザライン治療は、歯を大きく移動させる必要がある症例には適していません。マウスピースによる矯正は少しずつ歯を移動させるため、歯の移動距離が長いと治療に時間がかかったり、計画通りに歯が動かない場合があります。
インビザライン治療では、出っ歯やすきっ歯、凹凸がある歯並びなどを矯正できます。しかし、重度の不正咬合や外科手術が必要な場合はマウスピースでは対応しきれない可能性があります。
インビザライン治療の可否は、歯並びの状態や歯科医師の判断によって異なるため、歯科医院のカウンセリングでご確認ください。
治療成果に影響が出る具体例
インビザライン治療ではマウスピースの管理や毎日のセルフケアなど自己管理が必要不可欠です。もし、理想通りの成果が出なかったり、治療に失敗したと感じる場合は自己管理のミスが考えられます。
マウスピースの装着時間や交換時期を守らなかった
インビザライン治療では、1日20時間以上の装着時間を守る必要があります。また、2週間程度で新しいマウスピースに交換し、徐々に歯を移動させる仕組みです。
マウスピースの装着時間や交換時期を誤るとマウスピースが合わなくなり、作り直しが必要となります。その結果、計画通りに歯が動かず、治療の遅れや失敗につながるため、毎日の自己管理が重要です。
セルフケアを怠った
歯磨きやマウスピースの洗浄などのセルフケアを怠ると、虫歯や歯周病になる恐れがあります。インビザライン治療中に虫歯などのトラブルが発生すると、矯正治療を中断して虫歯治療を優先しなければならない場合もあります。
インビザライン治療を計画通りに進めるためにも、日々のセルフケアは大切です。歯磨きの際は、歯間ブラシやデンタルフロスを使いましょう。マウスピースの装着前は口腔内をケアし、マウスピースの汚れを落としてから装着するように心がけてください。
毎日のセルフケアを徹底すると共に、マウスピースを清潔に保つことで口腔トラブルを未然に防ぎましょう。
マウスピースの装着に関する注意点
マウスピースの取り扱いを誤ると治療の失敗につながります。インビザライン治療を成功させるためにも、正しい装着時間や装着方法を把握し、管理を徹底しましょう。
マウスピースの装着時間は1日20時間以上
インビザライン治療中はマウスピースの装着時間を守りましょう。マウスピースで歯を移動させるためには、1日20時間以上装着する必要があります。
マウスピースの装着を忘れたり、自己判断で装着時間を短縮すると、マウスピースの矯正力が発揮できず、治療が長引く原因になります。矯正前の歯並びに戻る(後戻り)、またマウスピースが合わなくなる恐れもあるため、食事や歯磨き、喫煙時以外はマウスピースの装着を心がけましょう。
マウスピースの正しい外し方・装着方法
マウスピースは正しい外し方、装着方法を守り適切に使用しましょう。マウスピースの破損や変形が起きると、マウスピースが合わなくなり治療に影響する場合があります。
マウスピースは以下の手順で外しましょう。
1. 左右どちらかの奥から外す
2. 反対の奥を外す
3. 前歯部分を外す
間違った外し方を続けると、マウスピースが変形する恐れがあります。マウスピースが外れにくい場合は、歯の裏側から指や爪を引っ掛けてゆっくりと浮かせて外してください。
また、装着する際は以下の手順でしっかりとマウスピースをはめ込みましょう。
1. マウスピースを奥歯側から合わせる
2. 左右どちらかの奥からはめる
3. チューイーを噛んでマウスピースをはめ込む
マウスピース装着時には、頬の粘膜をマウスピースに巻き込まないよう注意してください。「チューイー」はシリコン製のチューブで、マウスピースと歯をしっかりと密着させるための道具です。マウスピースを無理やり噛んで装着しようとすると破損の恐れがあるため、装着時はチューイーを使いましょう。
マウスピース装着中の飲食について
インビザライン治療では食事中にマウスピースを外す必要があります。マウスピースを装着したまま食事をしたり、適さない食べ物や飲み物を摂ったりすると治療に悪影響を及ぼすため注意しましょう。
マウスピースを装着したまま食事をすると?
インビザラインのマウスピースの厚さは0.5mm程度のため、マウスピースを装着したまま食事をすると、破損や変形の恐れがあります。また、歯とマウスピースの隙間に食べ物の一部が挟まる可能性もあります。歯やマウスピースに食べ物が付着したまま放置すると、虫歯のリスクも高まるため、食事中はマウスピースを外しましょう。
インビザライン治療中に控えた方がよい食べ物や飲み物
マウスピース装着中は歯に唾液が届きにくく、唾液の自浄作用が薄れるため、糖分が多い食べ物を摂らないようにしましょう。また、粘着性があったり、歯に挟まりやすい食べ物も虫歯や歯周病の原因になるため控えてください。
糖分が含まれない飲料であれば、マウスピースを装着したまま飲んでも問題ありません。しかし、コーヒーのように色が濃い飲料はマウスピースに色が付く恐れがあります。また、マウスピースの素材は熱に弱く、変形すると元に戻らないため、熱いものを飲む際も必ずマウスピースを外しましょう。
さらに、食べ物の硬さにも注意が必要です。インビザライン治療中は歯が敏感な状態にあるため、硬い物を食べると痛みを感じるケースがあります。歯の負担を減らし、スムーズに治療を進めるためにも硬い食べ物は控えましょう。
インビザライン治療では、マウスピースの管理やセルフケアに気を配る必要があります。さらに、虫歯やトラブルの予防として、定期的に歯科医院でケアを受けると安心です。
Q&A
Q1:重度の不正咬合の場合はインビザライン治療を諦めなければいけませんか?
A1:重度の不正咬合でインビザライン治療が難しい場合は、ほかの治療方法と組み合わせて矯正する方法があります。例えば、ワイヤー矯正である程度歯を動かしたあとにインビザライン治療へ切り替えることもあります。
Q2:マウスピースを1日付け忘れただけでも治療に影響しますか?
A2:1日程度であれば治療への影響はほとんどありません。しかし、マウスピースの装着を頻繁に忘れたり、数日間装着せずに過ごしたりすると、治療が計画通りに進まなくなる恐れがあります。